時代の変化と常識の変化(犬猫の関節病を例に)

こんにちは。獣医師の佐藤です。
もうすぐ6月ですので、動物病院では春の犬の予防シーズン(狂犬病予防注射、フィラリア予防)も終盤です。今年もたくさんのワンちゃんが来てくれました。

最近では、ほとんどのワンちゃんと飼い主様がフィラリア予防のために病院に来てくれますが、数十年前では、わざわざ飼い犬にフィラリア予防薬を飲ませるという方は少なかったそうです。ですから、毎年多くのワンちゃんがフィラリア症にかかって、血を吐いて亡くなってしまっていた、そんな時代が本当にあったのです。
昔と今で常識が変わってきているのですね。

同様に、定期的に混合ワクチンを打ったり、健康診断で血液検査をしたりすることも、昔はまだ一般的ではありませんでした。結果として、犬猫の寿命はここ30年で倍近く伸びたと言われます。

その時代と、その頃の科学の進歩に応じて、より良くペットと暮らす方法が考え出され、これまで分からなかった病気が診断できるようになり、治せなかった病気の薬が開発されてきています。今後も獣医学の進歩と、常識の変化で、より幸せなペットライフが送れるようになり、ペットの寿命がもっと伸びていくのが楽しみです。

私たち獣医師の世界で、今ホットなトピックスがいくつかあるのですが、その一つが関節痛です。
ペットの長寿化に合わせて、関節の痛みをどうするか、という問題が出てきたのです。

「えっ? 犬猫も足腰が痛くなるの?」
そんな声が聞こえてくるかもしれません。

日本人の3-4人のうち1人は腰の痛みがあり、6-7 人のうち1人は膝の痛みを抱えていると言われます。同様に、長生きするようになった犬猫も、関節病に悩まされていることが分かってきたのです。

米国の研究ですが、犬の20-25% で変形性関節症が発生しているという報告があります。
また、高齢猫の約9割が関節病ということも分かってきました。

これまで培われてきた獣医療の進歩で犬猫の寿命は延びましたが、せっかく長生きしたのに関節痛で苦しめられるというのは少し不憫に感じます。今こそ犬猫も健康寿命、つまり健康上の問題のために日常生活が制限されることのない期間をしっかり作ってあげたいと思うのです。

この分野については、まだまだ世の中の常識とは大きな隔たりを感じます。
・ 高齢期の犬猫にどれくらい関節痛が存在していて、どれくらい苦しんでいるのか
・ どうやったらウチのペットの関節痛を知ることができるのか
・ どんな治療が存在して何をしてあげられるのか
まだ多くの方がご存じないと思うのです。

今回、コラムで猫の変形性関節症について記事を掲載しています。

https://minato-ohori.com/service/feline_oa1/

ぜひ多くの愛猫家の方々に読んでいただき、「高齢期にはこれを気を付けよう!」という常識に定着していってくれることを願っています。
(犬編はまだできていませんが、お楽しみに!)

関連記事