犬猫の歯周病対策は長生きの秘訣

これを書いている2019年の12月は秋の健康診断が終わって、病院が少し一段落している状況です。今年は去年を大幅に上回るたくさんの犬さん猫さんたちが受診してくれました。受診された皆さん、お疲れ様でした。

さて、いずれの健診メニューの中にも「歯科検査」が含まれていました。「歯石の付着が問題ですねー」と獣医師から指摘された方も決して少なくなかったのでは??

実は、動物の歯って、すっごく大切なんですよー。

こんな報告があります。

  • 3歳以上の犬猫の80%が歯石の問題を抱え、4歳以上の犬猫の約10%が重度の歯周病に罹患
    (米国獣医歯科学会 AVDS American Veterinary Dental Society)
  • 小型犬では9ヶ月齢から歯周病が始まる可能性がある
    (AAHAホームデンタルケアガイドライン 2013)
  • 2歳までに猫の70%, 犬の80%が何らかの状態の歯周病を有する。
    そして、その割に治療されずに悪化することが多い疾患である
    (WSAVA デンタルガイドライン 2017)

歯周病の犬猫は実際に多いのですが、いかにありふれているかが良く分かります。

そして、これらを放っておくことで別の病気が誘発されます。人間でも歯周病が循環器の病気や糖尿病、腎臓病の悪化因子であることが言われているようですが、動物でも同様の研究結果があるようです。

  • 犬では歯周病が心臓、肝臓、腎臓など全身への悪影響を及ぼすことが多数報告されている
    (WSAVA 2017)
  • 猫でも歯周病は腎臓への悪影響を及ぼし、慢性腎臓病のリスクファクターになる。
    中等度歯周病で約14倍、重度歯周病では約35倍、リスクが高まる。
    (Finch NC et al. JVET Intern Med. 2016)

つまり、若くして始まる歯周病によって、これら慢性疾患のリスクが高まるのですね。この中には犬猫の死因の上位を占める腎臓病などが含まれていることにも注目です。逆に言うと、歯周病の対策をしっかりやっておけば、これらの病気になるリスクを回避できるということです。

ペット保険の最大手のアニコムさんが発行している家庭どうぶつ白書2017によると、
犬猫の最終的な死因について以下のようにまとめられていました。

 12歳以上の犬の死因
1位 泌尿器
2位 腫瘍
(3位 何らかの疾患による症状)
4位 循環器

 12歳以上の猫の死因
1位 泌尿器(32.7% の圧倒的1位)
2位 腫瘍
(3位 何らかの疾患による症状)

泌尿器の中には腎臓病が含まれていますから、
歯周病があるとリスクの高まる慢性腎臓病が関連してきます。
もちろん上に挙げたもの以外にも病気はたくさんありますし、実際の死因も様々なのは事実です。

ですが、例えばキレイな歯で高齢期を迎えられるようにする、
子犬、子猫の時から日々のデンタルケアにしっかり取り組む、
たとえ歯周病になってしまっても、適切な処置をしてあげることで治療してあげる、
これらで犬猫の死因上位を占める病気のリスクを減らすことができるんです。

なので、私たちは歯周病対策は犬猫が長生きするための秘訣だと思っています。
現在、動物たちの寿命がどんどん延びてきています。
平均寿命について、アニコムさんの家庭どうぶつ白書(2015)とペットフード協会の調べ(2017)を参考にすると、以下のようにまとめられていました。

家庭どうぶつ白書(2015)
犬 13.7 歳
猫 14.2 歳

ペットフード協会(2017)
犬 14.29 歳
(うち 超小型犬 15.01歳、 小型犬 13.91 歳)
猫 15.32 歳
(うち 外出しない子 15.97 歳)

私は、ペットがもっとデンタルケアをしっかりやれれば、
犬猫の寿命はまだまだ延びると本気で思っています。

寿命が延びるのもすばらしいことですけど、
単純に毎日顔を合わせて一緒に生活するペットの口臭がキツいよりは、
臭いがしない方がお互いハッピーですよね。

ぜひ、犬猫の歯周病対策の重要性を知って頂き、
今日からできることをさっそくやって頂きたいと思っています。

歯石を付けない、歯周病を悪化させないために、
ブラッシング、歯みがきガムなどの習慣をオススメします。

いまガッチリ付いている歯石を取って歯周病を治療するために、
安全な麻酔下での歯周ポケットレベルでのスケーリングをオススメします。

犬猫の歯に関するご相談はいつでもお受けしております。
ぜひ大切なペットと、幸せな時間をタップリ楽しめるように、一緒にがんばっていきましょう。