シニアケア第3弾は『体のケア』についてです。
シニア期にはいると、だんだん筋力が衰えたり関節の動きが悪くなることでスムーズに体を動かしにくくなっていきます。
動く時間が少なくなっていけばどんどん筋力は低下していき、体を維持する力も落ちてきてしまいます。
こんな状態の子はいませんか?
- 背中が曲がっている(丸くなる)
- 頭が下がっている
- 同じ肢を下にして座る、横になる
- 肢をクロスさせている
- 肢をかばうように歩く
- あまり走らなくなった
- キャットタワーに登らなくなった
- 肢が震えている
- 毛づくろいしなくなった
当てはまるものはありましたか?
その中には関節炎や椎間板ヘルニア、関節の脱臼などほかにも様々な病気が隠れていることがあります。
これらの症状には痛みがあることが多いので早めに気づいてあげたいですね。
また、病気以外に筋力の低下があると体を支えるのが難しくなり、震える、滑る、体の重心が頭側に行き過ぎたりして体を支える様々な場所に負担がかかってくることがあります。もし当てはまる症状がある場合は早めに診察を受けられてください。
正常な体の形を知ろう
体形の変化は毎日見慣れていると気づきにくいですよね?
変化に気づけるようにするには体の正常な形を知っておくことが大事です。
犬種によってはもともとお尻がさがっていたり背中が湾曲ぎみになっている子もいますが、基本はこの姿勢です。
どこか一つでも崩れていると、そこを補おうとほかの場所が頑張ってしまい負担がかかります。
まだ若い子の場合は今のうちに正面・上・横・後ろからといろんな方向からの体の全体写真をとっておくと若い時と年を取ってからと見比べることができるので今のうちから始めてみてくださいね。
体を動かす前に
今の状態を確認できたところで、それではさっそく運動!
……ちょっと待ったぁ!
早速バリバリ運動させようとしていませんか?
急に気合の入った激しい運動や無理な動きはかえって体に負担をかけることがあります!
特にシニアの子やしばらく軽い運動だけをしていた子は要注意です。
関節や筋肉が固まってしまい動かす時に痛みが出たり、体を動かしにくい状態になっていることがあります。運動をする前には体を温めたりほぐして動きやすい体にしましょう。
体を温める
体を温めることで血流を良くし、固まった関節や筋肉をほぐしやすくすることができます。
体を温めるにはいくつか方法がありますが今回はおすすめの小豆パックをご紹介します。
小豆(あずき)パックとは、小豆を布で包んだカイロのようなもので、温めたものを体に当てると小豆の天然蒸気でじんわりと温めてくれます。
人の製品でも売られていますね。
小豆パックの作り方
用意するもの
・小豆(粒のまま)…130g ※使用するサイズによって量を調節してください
・耐熱性の布(化学繊維が含まれるものは加熱時に溶ける可能性があるので使用しない)※普通はがき2枚分くらいのサイズがあれば十分です
・綿100%の紐…袋を縛れるくらいの長さ
・裁縫道具(ハサミ、糸、針)今回は念のため糸も綿100%にしました。
小豆以外の材料は100円ショップで揃えることができますよ(^^)
お裁縫初心者の私でも作れるようなタイプにしましたので、お裁縫が得意な方は小豆がこぼれず、入れ替えが簡単な入れ物であれば形はなんでも大丈夫です。
1.裁断
普通はがき2枚分くらいの大きさのものを2枚用意します。
2.縫合
今回は紐で結ぶタイプにしたので紐を通す部分をまち針でとめています。
端の4方向を小豆が出てこないくらいの間隔で縫います。
3.紐を通す
ヘアピンなどで紐を中に通し紐の終わりを結びます。
表にひっくり返すと…
こんな感じで袋が出来上がりました。
4.小豆を入れる
小豆を入れて紐を締め、最後に口元を1周縛ると小豆が出ません。
これで完成です!!(お裁縫が得意な方がいらっしゃいましたらぜひ看護師樋口にご指導ください…)
使用方法
1.電子レンジで30秒~1分ほど温めます(人の肌にしばらく当てても熱くない温度になるよう)
<温める際の注意>
温めすぎや連続しての使用…
小豆が破裂してしまいます。やけどの危険もある為お気を付けください。
続けて使用する際は4時間ほどあければ再加熱できます。
2. 首・肩・肘・膝、足先など体を動かす部分に5秒~10秒ほど優しく当てます。
動物さんに当てる前にまずは飼い主さんのお体に当ててみてください。
小豆からでる蒸気と柔らかな香りで気持ちも穏やかになると思います。
飼い主さんの心が癒された状態で動物さんに当てると動物さんもよりリラックスしてくれると思います。
<使用時の注意>
急性の炎症や皮膚の状態が悪い場合は悪化する恐れがある為お控えください。また、やけどには十分お気を付けください。
温まり具合が悪くなったり、中のお豆が割れてきたら交換の目安です。
そのまま使用し続けると効果も薄れますので定期的に新しいお豆と交換しましょう。
マッサージ
マッサージは理学療法でも行われており、手だけで行うことができます。
効果や注意点はこちら⇓
注意点に該当するものがある時は獣医師に確認してから行ってください。
マッサージにはいくつか種類がありますが、今回は手軽に行える方法をご紹介します。
手順は
1.ストローキング(軽擦法)
2.ニーディング(揉捏法)
3.フリクション(強擦法)
4.足先のストレッチ
5.ストローキング(軽擦法)の順番で行ってみましょう。(必ずしもこの順番でなくても大丈夫です)
マッサージをする時は落ち着いた環境で、飼い主さんもリラックスしながら行ってくださいね。
手が冷たいとヒヤッとしちゃうので事前に手を温めておくのも忘れずに!
1.ストローキング(軽擦法)
動物の後ろ側に座り、首(頭)→背中→お尻→肢の順番で手全体が動物の皮膚に触れるようにゆっくり優しく撫でおろすように動かしていきます。
いきなりグリグリマッサージをするとビックリしたりリラックスできない状態に
なることがあるので、まずは触れることに慣れてもらいましょう。
動物の真正面や真横からいきなりやるとこうなりますww
2.ニーディング(揉捏法)
リラックスしたら、次はお尻の近くの皮膚を丸めるように優しくつまみ
ゆっくり引っ張るようにしながら頭に向かってずらしていきます。
ニーディングには筋肉のハリやコリを緩和できます。
強くつまんだり引っ張りすぎると痛いので、優しくゆっくり行いましょう。
皮膚が硬くゆとりがない子は嫌がることがあるので、嫌がる場合は先に優しくフリクションで柔らかくしてから行ってみてください。
3.フリクション(強擦法)
皮膚にゆるみができたら、今度は指先や手のひらをあてて優しく
ほぐすようなイメージで移動させていきます。
クルクルと円を描くようにするとわかりやすいですね。
フリクションは血流やリンパの流れを改善し老廃物の除去に効果的です。前に重心が行き過ぎている子は肩周りが張っていたり、後ろ足がうまく使えていない子は関節周りの筋肉が固まってきてしまっていることがあるのでゆっくりほぐしてください。この時も強くこするようにしてしまうと痛みや不快感が出るので、優しく皮膚を動かし柔らかくなったら筋肉へアプローチすると嫌がられにくいです。
4.足先のストレッチ
足先を揉むようにしてほぐしたり、痛がらない範囲で指を曲げ伸ばします。
写真
前に重心がいきがちな子は足先にも負担がかかっていることがあリますのでゆっくりほぐしてください。冷えている子やカチカチに固まっている子は温めてから行うとほぐしやすくなります。
5.ストローキング(軽擦法)
マッサージの最後にもう一度ストローキングを行ってマッサージは終了です。
触られるのが苦手な子や、マッサージに慣れていない子は最初は嫌がってさせてくれないこともあります。全部一度にやろうとせずに毎日少しずつお互い楽しくできることを目標にされてみてください。
シニアの子におすすめな運動って何?
体が動きやすくなったところでやっと運動に入ります。
シニアの子が運動をする目的は、
・筋力を落とさないこと
・可動域(関節が動く範囲)を狭めないこと
・血流を良くして代謝を上げること
これらを”維持して身体機能の低下を防ぐ”ことですが、若い頃のようにたくさん運動するのが難しくなってきますのでその子に合った運動を毎日行うこと継続して行うことが大事になってきます。
運動と言ってもいろいろな方法がありますが、ただ長時間だらだら運動してもあまり効果的とは言えません。
また、高齢の子は長時間の運動ができないことがほとんどです。1回の運動を効果的にするには運動の量よりも質を高めてみましょう!
例えば、
『A』30分ただコンクリートの道を歩く
『B』30分坂道や砂浜を歩く
どちらの方が運動量が多いと思いますか?
おそらく皆さん『B』を選ばれた方がほとんどではないでしょうか?
坂道や砂浜は足を大きく動かしたり、慣れない動きをしたりと
筋肉にかかる負荷が大きくたくさん体を使いますよね。
一方コンクリートは綺麗に舗装されている道が多く歩きやすいですが地面が硬いので長時間歩くには不向きです。
このように、同じ運動時間でも運動の質によっては効果に差が出てきます。
長い時間運動ができないシニアの子たちにも簡単に出来る運動があります。
ワンちゃんとネコちゃんでは内容が少し変わってきますので
まずはワンちゃんからご紹介していきましょう。
ワンちゃんの運動はまずはお散歩です。
なんだ、ただのお散歩か…と思われた方、ただのお散歩ではないんです。
お散歩の場所を運動量が多くなるような場所にしてみることで、
踏ん張る、関節を大きく動かすなどの動作が加わり運動効果を高めてくれます。
シニアワンちゃんおすすめお散歩スポット
1.芝生
おすすめポイント
・足への負担を軽減
・自分の力で体を支えづらい子に
芝生は滑りにくく地面が柔らかいため肢が衰えた子でも
踏ん張ることができて歩きやすいです。
クッション性があるので足にかかる負担も軽減できます。
※ノミやマダニが寄生する恐れもあるので予防はしっかり行っておくと安心です!
2.木の根
おすすめポイント
・またぐことで関節の曲げ伸ばし
・踏み越えることで筋力アップ
・自分で足を上げようとすることで脳への刺激にも
木の根をまたぐことで肢を大きく使い、関節の曲げ伸ばしを行うことができます。
ワンちゃんも根を避けようとしたりそのまま踏んでも足に木の感触が伝わり
脳にも体にも良い刺激になります。
歩く際はゆっくりと肢をあげていることを確認しながら進みましょう。
走ったりジャンプするだけだと効果が得られないことがあります。
※目の見えない子や既に可動域が狭く足を上げにくい子は
つまづいて転倒する恐れがあるので十分に気をつけてください。
3.砂浜
おすすめポイント
・大きく足を動かせる
・転んでも衝撃が少ない
・若い子の筋力アップにも
人でもトレーニングに利用する方がいますね。
砂浜は不安定な足場でをしっかり踏ん張ることができ、筋肉量をあげるのに効果的です。
一緒に運動することで飼い主さんも素敵な体作りができるかも!?
おすすめ室内運動
1.布団やクッション
おすすめポイント 準備するもの
・足を大きくうごかせる ・布団や平らなクッション
・転倒しても衝撃が少ない
・寝る前のちょっとの時間にも
お布団やクッションは柔らかく弾力があるので、その上を歩いてもらうことで
体を支えようと踏ん張るために筋肉を使い、沈み込みを利用して関節を曲げたり伸ばしたり
することで関節が硬くなるのを防ぎ改善につながります。
転んでもしてもケガをするリスクも低いため安心して行うことができます。
ですが、すでに膝が悪くなっている子や転んでしまう子は体を支えながら行ってくださいね。
2.タオルまたぎ
おすすめポイント 準備するもの
・お手軽 ・滑りにくいマット(ヨガマットなど)
・関節の動きの改善 ・棒状にできる長さのタオル
・おやつやおもちゃで楽しい時間に ・おやつ
棒状でまたげるものと滑りにくいマットを用意して、その上を踏まずに足を上げて跨いでもらう運動です。
関節の動きの改善や筋力アップに役立ちます。
モデルさんがいなかったので人間の足で失礼しますが、イメージはこんな感じです。
ジャンプしたり飛び越えてはあまり意味がありませんので、しっかりと足をあげて関節を曲げ伸ばしできているか、ゆっくり確実に”またいでいるか”を確認しましょう。
跨げるものなら何でもいいですが、タオルを使うと踏んでしまっても痛みがなく片付けも楽なので使いやすいです。
おやつやおもちゃなど興味をひくもので誘導すると楽しくできますね。
しっかりご準備ができる方は、100円ショップで売っているワイヤーネット+スタンド、跨げるサイズの棒を組み合わせると運動器具がつくれますよ!ただし、正しい方法で行わないと転倒のリスクやあまり意味のない運動になってしまいますので注意しましょう。
※お写真はリハビリ施設P&H-Paws&Handsさんよりお借りしています。
3.トンネルくぐり
おすすめポイント 準備するもの
・しゃがみポーズで足腰を使う ・300円ショップなどで売ってるトンネル
・またぐ運動が苦手な子に ・滑りにくいマット(ヨガマットなど)
・探検感覚でワクワク
トンネルをくぐることでしゃがむ姿勢になり、肘や膝など関節を動かします。また、低姿勢を維持するため筋力UPにも繋がります。名前を呼んだりオヤツやオモチャを使ってうまく誘導してあげると楽しみながら行うことができます。ただ、超小型のわんちゃんや足の短いねこちゃんには通り抜けるだけになってしまうので不向きです。楽しく遊ぶ分には良いかもしれませんね。
いかがでしたでしょうか
高齢になってきたからこそ若い頃よりも体のケアが大事になってきます。
今からできることを毎日少しずつ楽しみながら行って行きましょう!
次回のシニアケアは、認知症ってどんなもん?認知症にまつわるシニアケアについてご紹介します。