実は多い、ネコの関節病
猫で一番多い病気は何だと思いますか?
猫さんを飼われている方に質問です。
正解は「関節病」です。
猫は腎臓病が有名ですが、実はそれよりも多いのが変形性関節症という病気です。
その比率は12歳以上の猫で9割。高齢猫のほとんど大多数が変形性関節症を持っていることが分かっています。もう少し若い猫ではどうでしょうか。6歳以上の猫100頭での研究では61%の猫で少なくとも1つの関節に異常が見つかったという報告があります。
つまり、加齢と共に徐々に進行していくのだと考えられます。確かに近年、ネコはとても長生きする子が増えてきてくれました。ネコの長寿化に伴い、関節のケアも重要になってきていると思うのです。
痛みに気付いてもらえない理由
「え? ウチの猫は別に関節痛がっていませんよ。触っても痛がらないし、普通に歩けているし」
多くの方がそのように言われます。確かに2歳、3歳くらいの若い猫さんではそうかもしれません。でも8歳くらいのシニア期に入り始めた頃ではどうでしょうか?
ネコは自分の弱みを周りに見せない動物と言われます。少しくらい足が痛くても我慢して普通に振る舞います。生存していくために、足を引きずって歩く姿を見せられなかったのでしょう。なので、一緒に生活している飼い主の目からであっても、なかなか異常に気が付いてあげられないのです。
また、ある日突然足を痛がったり、急な変化が出ることはありません。加齢と共に、徐々に、ゆっくり、進行していきます。毎日少しずつ、小さな変化が蓄積していくとき、大きな変化になっていくものです。これもまた、ネコの変化が気付かれにくくしている原因と言えます。
もう一つ、これが一番大きな要因だと思いますが、
高齢猫に増えてくる症状であるが故に、「活動性の低下=加齢」と解釈されてしまうことです。歩様がぎこちない、走らない、高いところに登らない・・・そんな姿を見た飼い主の方の多くは、「ウチの猫も、もう歳だから仕方ないかなー」と納得されてしまうのです。
確かに時計の針は戻すことができませんし、障害を受けた関節の変化がキレイに元通りに戻るのは難しいかもしれません。ただし、加齢のせいだからで諦めてしまうのでは、もったいないように思います。変形性関節症という病気であれば、治療をすることができます。
治療のゴールは痛みを和らげること、病気の進行を抑えること。ぜひ、早くに気付いてあげて、早期の治療をしてあげてください。
ネコの痛みに気付いてあげるための6つの質問
これから、ネコの変形性関節症の診断に有効な6つの質問をしますので、YES/NO の数を数えてみてくださいね。
1. ジャンプしますか?
2. 飛び降りますか?
3. 階段やステップを登りますか?
4. 階段やステップを降りますか?
5. 走りますか?
6. 物を追いかけますか? (オモチャや獲物)
いかがでしたか?
この質問に1つでもNOがあれば、変形性関節症の可能性は55% という研究結果があります。
逆に全てYESであれば、変形性関節症の可能性は3% まで落ちますので、いったん痛みの話しは置いておいても良いかもしれませんね。
もし関節症の可能性アリという結果であれば、一度病院にご相談にいらしてみてはどうでしょうか。
治療方法
1.非ステロイド性消炎鎮痛剤
従来、関節症の治療には非ステロイド性の消炎鎮痛剤が使われてきました。もちろん、現在もよく使われる治療薬の一つです。毎日シロップの薬を経口で飲む方法などがよく使われています。
欠点は、口から薬を飲むのが苦手なネコが少なくないことです。ほぼ毎日続きますので、薬を飲ませる人間側も大変ですよね。
さらに、なるべく薬の副作用が出にくいように調整はしていくのですが、やはり非ステロイド性消炎鎮痛剤は腎臓や消化器への副作用が懸念されます。変形性関節症は高齢期に多い病気ですから、腎臓へのケアも考えると、使用をためらうケースも経験します。
2.サプリメント
即効性はありませんが、意外に侮れないくらい、とてもよく効いてくれることがあります。サプリメントは薬剤ではなく栄養なので副作用はありません。私たちの病院では消炎作用のある脂肪酸サプリメントをご提案することが多いです。2週間から1ヶ月くらい続けると効果が見えてきたと実感されるケースがあるようです。
グルコサミンやコンドロイチンなどの、人間の関節に良いと言われるサプリメントの猫版も存在しますが、これらについては専門家の間でも賛否両論で結論が出ていない状況のようです。少なくとも軟骨の機能は改善させないことが示されています。
3.注射薬
今年2023年2月から、使えるようになった新しい薬です。既に海外では認可使用されていて、実績のある薬です。この薬の良いところは、病院で1回注射をすれば、効果が1ヶ月持続することです。なので、お家で毎日飲ませたりする必要はないので手間がかかりません。
また腎臓や消化管への副作用が少ない(おそらくない)のも使いやすいです。慢性腎臓病と並行して治療するには都合が良いように思います。
最初の1ヶ月で改善が見られる可能性が約6割、さらにもう1ヶ月続けると約8割まで反応率が高まったとの報告があります。
まだ新しい薬ですので、現時点で私たちもそれほどたくさんの回数の治療ができていませんが、実際に使ってみて、なかなか良い手応えを感じているところです。
4.生活習慣、体重管理
若い内は適正体重を目指しましょう。
太っている猫がかわいいというのは人間の勝手な都合です。猫にとってはいい迷惑です。
猫さん、家の中で退屈していませんか?
お留守の間にやることがなくて仕方がないからお昼寝しているだけではないですか?
家の中は平和で安全な良い環境ですが、猫の狩猟本能が刺激されず、運動不足になりがちです。
猫が自分からジムに行って筋トレすることはありません。走ったり、物を追いかけたり、高いところに飛び乗ったり、猫が楽しく運動できるような遊びを人間が促していきましょう。
病院にご相談を!
ほとんどの高齢猫が関節を痛めていることを、まだ多くの飼い主様に知られていないのが現状です。ぜひ「ウチの猫は大丈夫!」と思い込まずに、「ウチの猫大丈夫かな?」と人間の方が気にかけてあげてください。
私たちの病院では、
生活の様子をお聞きして、レントゲン検査で骨や関節の評価を行い、猫とご家族に無理のない方法で、治療方針を相談していくことができます。
せっかく長生きしてくれた猫さんが、痛みに耐えるシニアライフにならないように、今からできることを一緒に考えていきましょう。