今から始めようシニアケア『排泄 編』

シニアケア第2弾は『排泄』についてです。
排泄は “体をめぐっていらなくなったものを体の外に出す” という私たち生き物が生きていく中でとても大切な行動です。
普段何気なく行っていることでもこれが出来なくなると大事ですね。

若いころはお散歩ついでにお外で、お部屋のトイレマットや専用トイレでしたりと様々な生活スタイルに合わせて排泄をしてもらっていると思います。子犬や子猫の頃はおトイレを覚えてもらうまでにたくさん苦労された方がいらっしゃるのではないでしょうか?
しっかりトイレができるようになっていても、高齢になってくると今まで当たり前にできていた排泄行動がだんだん思うようにできなくなってくることがあります。今回は、そんな場面に出会ったときにできるケアをご紹介していきます。

排泄の環境

動物さん達はどこでオシッコやウンチをしていますか?
お外、室内、トイレトレー、ペットシーツ、猫ちゃんだと箱型トイレやシステムトイレが多いのではないでしょうか?
ワンちゃんやネコちゃんは排便時には踏ん張りポーズ、排尿時はお座りしたり足を上げてする場合もあるかと思います。排泄をするにはしっかりと自分で体を支える必要がありますが、筋力が落ちた子や関節炎や膝蓋骨脱臼、椎間板ヘルニアなど体を使う時に痛みや違和感が出ている子はこの体勢をとるにも一苦労です。トイレの場所が遠いとたどり着く前にお漏らししてしまう子もいます。
トイレではないところで排泄したり、排泄時によろけてしまう子はトイレ環境を見直してみてはいかがでしょうか?

トイレ以外の場所で排泄する時は

トイレ以外の場所で排泄する原因には、
病気
・トイレの場所が遠く間に合わない
・場所を忘れてしまった(わからなくなってしまった)
・トイレ場所の気温の変化が激しい
・物音に敏感になり安心してトイレができない
・トイレの高さが高い、場所が狭い
などなど病気以外では設置場所やトイレ自体に問題があるケースがあります。

トイレの場所が遠く間に合わない…
人間もトイレに行きたくてもトイレが遠ければ間に合わないのと同じで頑張ってトイレを目指していたのに間に合わずトイレではないところでしてしまう=トイレ以外で排泄 に繋がっている場合があります。こんな時は思い切ってトイレの数を増やしてみてください。(お掃除は大変になりますが…)置く場所はその子が良く行き来する場所や目に留まりやすい場所に置くと立ち寄りやすくなります。

場所を忘れてしまった(わからなくなってしまった)…
認知機能が低下するとトイレの場所を忘れてしまったり、視力が低下(見えない)しているとトイレそのものに気づきにくくなってしまいます。どうしても場所がわからない場合はオムツの使用を検討しても良いと思います。ですが、トイレまでの道のりを歩きやすい状態にする・足の感覚で覚えてもらう・光を使ってトイレを目立たせることで ”ここがトイレだよ” と教えてあげることもできます。

道のりの整備には、ジグザグした道よりまっすぐ開けた道にして途中で迷わないようにしたり、歩きやすい滑り止めマットでトイレの道を作ってみてもいいですね。目が見えにくい子は、移動するものに反応して光るセンサーライトをトイレの道のりに置いておくと、暗くて見えない時もトイレまでたどり着きやすくなります。ただし、ガラッと整備することで環境が変わり余計にわからなくなることもありますので、一気に変えず少しずつ変更してみてください。
最初の練習にはトイレの時間が近づいたときに飼い主さんが誘導して教えてあげてください。

トイレ場所の気温の変化が激しい…
寒いところや暑いところ、温度のせいでその場でのトイレが不快になっている場合がありますので窓際や玄関など気温の変化が激しいところにトイレがある場合は一定の温度が保てるような場所に移動してみると改善できる場合があります。温度計を置いておくのも良いかもしれせんね。

物音に敏感になり安心してトイレができない…
動物が排泄する時は敵に自分の隙を見せないよう見つからないところで行う本能が備わっています。
そのため頻繁に物音がすると安心して排泄することができません。
窓際や玄関、テレビなど刺激になるようなところはトイレの場所に不向きです。よくお聞きするのが、お外が見えたほうが良いと思い窓際に置かれる場合がありますが、私たちもトイレをする時に外の人がウロウロされたら安心してできませんよね(;’∀’) これと同じで目に見える場合も安心できませんのでおトイレの場所は静かで安心できるところを選んでみてください。

トイレの高さが高い、場所が狭い
猫ちゃんの場合、筋力低下や関節痛などで上り下りが難しくなっているとトイレに入るのが困難になっている場合があります。そんな時はすのこ式(システムトイレ)の場合はすのこの部分だけを残して下に大きめのシーツの上に置いてみたり、上部カバーを外して少しでも高さを低くすることができます。お気に入りのトイレでしかしない場合は、ペット用スロープ(にゃんこスロープで検索!)や段ボールを重ねて傾斜を作り100均で売っているような板に滑り止めシートを貼った手作りスロープをトイレ周りに置いておくと登りやすいかもしれません。

また、範囲が狭いとトイレの外にウンチが落ちてしまうこともあります。大きめのトイレを買ってあげたり、浅くて広めの段ボール箱に撥水性のある敷物(レジャーシートなど)を敷くと手作りトイレもできます。ただし、周りが浅いと砂が飛び散ったり本来のトイレよりも耐久性が落ちるため、転倒のリスクがある場合いはぶつかって壊れないようにビニールテープで補強したり転んでも痛くないよう周りを毛布で囲ったりしてみてもいいかもしれません。

尿失禁(尿漏れ)の原因

老化による場合は膀胱や尿道の筋肉が弱くなりそれらに関わる神経の衰えや異常などによりおきることががあり、メスの場合はホルモンバランスの変化によって起こすこともあります。
病気が原因の場合は、膀胱炎、腎臓病や内分泌異常による多飲多尿、ヘルニアなどの神経を圧迫するもの、腫瘍などが関係する場合があります。
尿漏れが見られた時はまず診察を受けられてください。

オムツのメリット・デメリット、使用時の注意

オムツは便利で使いやすい反面、状況によっては使用が難しくなる時もあります。
オムツを使うことで起こるメリット・デメリットには、

メリット
・どこにでも排泄してしまうのを防ぐ
・排泄物が最低限しか体につかず全身が汚れにくい
・お部屋が排泄物で汚れにくい
・出先で排泄しても片付けが楽
・可愛い柄も多いので気分転換にも

デメリット
・皮膚がかぶれることがある
・サイズが合わないと排泄物がはみでてしまう
・脱げやすい
・費用がかかる
・つけられるのを嫌がることがある

などがげられます。動物と飼い主さんの状況によってうまく使用していけるといいですね。

使用時の注意点として、オムツによる皮膚の荒れや感染症が起きることがあります。
動くことでオムツと皮膚がこすれて傷ができたり、排泄物が長く皮膚に接することでジュクジュクになったり、陰部から菌が入り包皮や尿道、膀胱などに炎症が起きることもあります。オムツ着用時には、傷ができるときには擦れる場所に柔らかいガーゼやコットンを挟んだり、着脱の度に皮膚や陰部などをウェットシートなどで綺麗にして常に清潔に保つようにしましょう。

オムツってどんなものがいい?

今では様々なペット用オムツがでていますが、種類が多くてどれを買おうか悩んでしまいますね。
どれも品質の良いものが多いですので基本はどれを使ってもよいと思います。

当院では、ユニ・チャームペットさんのオムツをよく使用しています。
吸収率、通気性もよく絵柄も可愛い為つけるたびに可愛いお尻がみられます♪

オムツを選ぶポイントとしては、
吸収時間
通気性
コストパフォーマンス
基本はこの3点を意識しています。

吸収時間は尿をどれだけ吸ってくれるかが示されているので、長いほど交換頻度も減り、尿で陰部がべちゃべちゃになることも少ないです。
通気性が高いとオムツの中はムレが少なく快適になり、通気性が低いほどムレムレで不快感は増し皮膚が荒れる原因にもなります。女性の生理用品を選ぶ感覚とほとんど同じですね。
なんといっても譲れないのはコスパで、いくら良いものを選んでいても出費が重なれば人も動物もアンハッピーです。できる限り低コストで押さえたい所ですよね。

人用オムツをペット用オムツに

そこで重宝されるのが人用のオムツです。
人用オムツは吸収性もあり動物用よりも低価格で量も多いためかなりコストは抑えられるかと思います。 薬局で値段サーチをしてみると赤ちゃん用(小児用)おむつは大容量低価格が多く、大人用介護おむつは小型〜中型犬サイズのペット用オムツと同じくらいの価格が多かったです。(もっと詳しく探せば最安値がみつかるかも…?)男の子用のベルトタイプのマナーウェアには人用の尿パットや授乳パットを使用するとオムツごと変えずにパットを交換するだけで済ませることができます。
人用のオムツではサイズが合わなかったりしっぽの穴もあけないといけないので少し手間がかかってきます。小児用オムツだと1サイズ上のサイズを選ぶと合うことが多いようです。(ペット用Sサイズ≒小児用Mサイズのような感じ)

ペット用オムツの作り方

人用オムツをペット用オムツにするにはしっぽの部分をつくるだけでOKです。

〈準備するもの〉
・人用オムツ
・ハサミ(よく切れるもの)
・サージカルテープ ※ガムテープでも可
・マーカーペン(印をかく用)

1.まず尻尾の穴をあける位置を決めます。
場所は人間のお腹側(止めるテープが付いてない方)に印をつけます。
そうすることでペット用オムツと同じく背中側でテープが止められるようになります。

穴をあける位置はオムツの真ん中からやや上あたりになりますが、動物さんによってかなり異なりますので初めは簡易的にかぶせておおまかな位置をマーカーで書いておくとわかりやすいです。今回私は初めて作ったのでちょっと位置が低すぎました…。失敗してもまたチャレンジ!で全然いいかと思います。

2.しっぽの穴をあける
位置を決めたら、三角に印をつけて半分に折ってハサミでチョキチョキ。三角に切ることで飼い主さん自身がハサミでケガをしにくくなります。穴が小さすぎるとウンチがオムツの中に入るので、オムツ外でウンチをさせる場合は大きめに切っておくとしっかりでます。ウンチの出方やしっぽの形によって穴の形も合うものに変更してみると使いやすくなるかもしれません。

3.あけた穴のふちにテープ張る
穴をあけたところは中から吸水ポリマーが出てきて大惨事…になることがあるのでテープで周りを閉じておくと安心です。

撮影時にビニールテープしかなかったのですが、100均や薬局でも売っている医療用サージカルテープを使うと皮膚にあたっても痛みが少なく柔らかいのでとめやすいです。ガムテープも柔らかい物であれば使用できます。

完成!!(とっても不格好…)でもこれでいいんです。どうせ使ったら捨てるんです(・ω・)
納得のいく完成品ができればお手本として残して置くと次に作るときに楽ですね。

オムツから漏れるとき

オムツがズレたりしっぽの穴が大きかったり排泄物の状況によって外に漏れて ”あちゃ~” といったご経験がある方も多いのではないでしょうか?

オムツから漏れる原因には、
尿量が多すぎて吸収できる範囲を超えた
オスのワンちゃんで陰部がオムツからはみでてしまう
動き回ってオムツがはずれる
お留守番中はオムツの外にウンチをださないようにしたい
などがよくあり、ほかにもいろんな要因が重なって起きることもあります。

しかし、大きく分けると吸収量・範囲・固定に着目すると解決しやすくなります。

例えば、
長時間オムツを変えられない…【吸収量】
そんな時は吸収率が高く通気性が良い物をお出かけ時にはめておきます。動物用だとパッケージに持続時間が書いてあることが多いので時間表記が長いものを選んでください。また、人用の尿パッドを使用してみて吸収力を比べてみてもいいかもしれません。

オスのワンちゃんで陰部がオムツからはみでてしまう…【範囲】
この場合はマナーベルトタイプのオムツをはめて覆いかぶせるように普段のオムツを履かせると陰部もお尻もダブルで覆うことができます。
それでもずれてしまう時は介護服やサニタリーパンツも検討してみましょう。

動き回っておむつがはずれる…【固定】
徘徊したり動き回ってしまう子は、サスペンダー付きのペット用サニタリーパンツや介護服が便利です。
今は可愛いデザインも豊富でお洋服が苦手でなければ使いやすいと思います→犬用介護服マナーガード
ねこちゃんはこちら→猫用術後服-キャットウェア
動きやすいタイプのお洋服を上半身に着せて両端がクリップになっているものでお洋服とオムツをつなげてみたり、ペット用サスペンダーをつけたりしてずれないようにする方法もあります。ただし、クリップやサスペンダーは硬い部分があるので寝たままズリズリ動いてしまう子や転倒の危険がある子は痛かったりケガをする可能性もあるので使用時はよく様子を見れるほうが良いかもしれません。
注意点として、お洋服が苦手な子にはストレスがかかってしまうので嫌がる場合は無理しないようにしましょう。

お留守番中はウンチをオムツの外に出さないようにしたい…
基本はオムツ内に排泄物を溜めたままだと体に排泄物がついて不衛生になるので基本はすぐに取り換えるのがベストですが、どうしてもお留守番をさせないといけない場面は多くあると思います。決まった場所でウンチができない子は、所かまわずウンチをしてそのままフミフミ…なんてことも。そんな時は”WANCHIうんぽパンツ”がおすすめです。→WNCHIうんぽパンツ
ペット用オムツにウンチをキャッチできる袋がついており、オムツの中に便をためることなく袋でキャッチすることで、動物もお部屋も汚れる心配がありません。ほかにも、既存のしっぽ穴にテープをはり、穴の部分を小さくする方法もあります。

排泄に関する欲求吠えの対策

寝たきりや自分で排泄ができない子はトイレがしたいー!と鳴いて飼い主さんに知らせることがあります。認知症で鳴いていると誤解されることがありますが排泄欲求を満たしてあげると泣き止むケースはこれにあたります。ずっと付きっきりで対応できる方はその都度介助をしてあげられますが、お仕事で不在の時や夜遅い時間に鳴いてしまう場合はご近所トラブルに繋がったり飼い主さんが夜眠れなかったりと困った問題に発展してしまいます。

この時間に排泄しないでね!と伝えることはできませんが、してほしい時間に誘導してあげることはできます。そのためには、その子が普段何時に排泄をしているか記録をとることが重要です。ノートに記録したりスマホアプリにも排泄記録が残せるようなものがありますのでうまく活用できると便利です。時間を把握するだけでなく、排泄の状態まで記録しておくと病院に行った時に細かく獣医師に伝えることができますので普段から記録をつけておくと安心です。ただし、お世話をする方が留守の間はいつ排泄したのかわからないので、排泄物の乾燥具合をみてみたりペットの見守りカメラを導入できると確実かと思います。

ある程度排泄をする時間がわかってきたら、次は排泄に出すタイミング・食事や飲水・寝かせている時間を確認してみましょう。すると、この時間にお水をあげると夜中に起こされるな、この時間にご飯をあげると留守の間にウンチで汚れるな…などおおまかな予測を立てることができます。ここまで情報が集まれば後は少しずつ対応する時間をずらしてみます。ただし、これはあくまで人間の都合の問題ですので動物さんに負担がかかるような間隔のあけかた・食事や飲水の制限・排泄を我慢させるようなことはしないであげて下さい。

排泄物で体が汚れた時は

少し汚れた程度であれば、ウェットシートや蒸しタオルなどで拭いてあげることができますが広範囲で汚れてしまった場合には拭くだけでは対処しきれない時がありますよね。ですが高齢の子に全身濡らしてシャンプーは体への負担が大きく体調を崩してしまうこともしばしば…。小型のワンちゃんは洗面台などで下半身だけを洗うこともできますが、洗われるのが苦手なネコちゃんや抱えるのが大変な大型のワンちゃんは下半身を洗うのも一苦労ですよね。

そんな時にお勧めしたいのが、ユニ・チャームペットさんのお尻まわり洗浄液です。

洗浄液を専用のボトルにぬるま湯で薄めて使用します。天然ひまわり由来の石鹸がやさしく汚れを落とし、ヒアルロン酸、すべすべコート成分(リピジュア)、カキタンニンが配合されお肌や被毛にも優しい製品です。使用頻度にはよりますが1本で約3か月ほど使用できるそうです。

使い方は、汚れたところに直接かけ流すだけでOK。洗浄液は洗い流す必要がない為体を必要以上に濡らさずに済みます。
ボトルの出口はシャワー状になっているため水圧加減で汚れを落としやすくできます。※使用する際はペットシーツを敷いた上で行ってください。

排泄物が被毛にくっついて綺麗にするのが大変な場合は、排泄物が付きやすい範囲の毛をカットしておくとお手入れが楽になりますよ。

 

さて、今回のシニアケア『排泄 編』いかがでしたでしょうか?
排泄に関するお悩みはななか大変なことも多く試行錯誤する場面が多いかもしれません。
実際にご経験されている方で、「うちの子はこんな風にすると良かったよ!」「こんな時はどうしたらいい?」などのご意見やアドバイスがございましたらぜひぜひお聞かせください!より良い情報をみなさんと共有していけるように私もはりきって発信していきたいと思います。

次回は、老いを感じさせない元気な体に!『体のケア 編』をご紹介します!