今から始めようシニアケア『お食事 編』

シニアケア第1弾は『お食事 』についてです。

毎日食べる食事には、体を作るための大事な栄養素が含まれていますね。
バランスの取れた食事をしっかりとることで私たちの健康は維持されています。

しかし、体の変化や体質によってはただバランスの取れたフードだけでは
その子にあった健康が維持できないことがあります。
その時、その子の体の状況にあったフードを選べると体にとってはうれしい限りですね。

 

シニア期には何をあげたらいいの?

シニアになったからこれを絶対に食べさせなければいけない!というものはありませんが、
こんなお食事や栄養をとれるといいよ~というのはたくさんあります。

なかでもシニア期に最も配慮しておきたいのが
活性酸素による脳や細胞へのダメージ
腎臓や心臓へのダメージ
筋肉量の維持
関節軟骨や関節の痛み
などがあり、中でも活性酸素は老化にかかわる大きな要因の1つです。

認知機能にもかかわる活性酸素って?

活性酸素は動物が生きる上で発生するもので、通常は体内でこれに対抗する酵素を
作ることができます。しかし、年齢を重ねると活性酸素が発生しやすくなり、酵素の働きが低下することでどんどん体の細胞が壊されてしまいます。

活性酸素から体を守るには、活性酸素の発生やその働きを抑えたり取り除いてくれる効果がある
抗酸化物質を食事に取り入れてみましょう。

抗酸化作用のあるの栄養成分には、
ビタミンE・ビタミンCなどのビタミン群
DHAEPAαリノレン酸などのオメガ3脂肪酸
リコピン、タウリンやポリフェノール、βカロテン、ルテイン
などがあり、これらを多く含むフードを選ぶと活性酸素を抑えることができます。

食事の選び方

結局何をたべさせたらいいんじゃ~い!という方は今その子に必要なものが
何かを考えると選びやすいかもしれません。

例えば…
12歳になってなんだか動きがにぶくなってきた。
血液検査でも少し腎臓の機能が落ちているみたい…

という子には、グルコサミンやEPA/DHAなど関節や炎症に配慮した栄養成分や、
腎機能の低下を進行させないようにリンやナトリウムの量を制限したものを選んだり

認知症や筋肉量の低下を早めに防いでおきたい…。

という子には、EPA/DHAやビタミンCビタミンEなどの抗酸化成分を多く含んだものや、
カルニチンやロイシンなどの筋肉維持に特化した成分の入ったものを選ぶなど、
その時に応じた栄養成分を見てみると良いかもしれません。

もし見ただけではわからない場合は、獣医師や動物看護師はもちろん
フードを取り扱っているメーカーさんに直接お問い合わせ頂くと丁寧に説明してもらえます。

当院でお勧めしているシニア用フード

ヒルズ サイエンス・ダイエット〈プロ〉
【健康ガード アクティブシニア】 7歳からずっと
ヒルズ サイエンス・ダイエット〈プロ〉猫用シニアトータル機能7歳以上₍旧アクティブシニア₎

ビタミンCやビタミンE、オメガ脂肪酸が多く含まれており、特に脳への健康に配慮されています。
カルニチンやグルコサミンなど内臓の筋肉や関節に配慮した成分が多く含まれており、
腎臓や心臓の健康維持に気を付けたいリンやナトリウムなども調整されています。

ロイヤルカナン エイジングケア

   

EPAやDHAなどの成分はもちろん、タウリンやカルニチンなど筋肉を
維持する成分も豊富に含まれています。
サイリウムやフラクトオリゴ糖など消化に配慮された成分も入っており、
腎臓や心臓の健康維持に気を付けたいリンやナトリウムなども調整されています。

 

ドクターズダイエット
シニア・ハイシニア(ハイシニアは猫のみ)

抗酸化成分や腎臓・心臓の健康維持に配慮されており、フラクトオリゴ糖などにより
腸内細菌のバランスを維持します。また、グロビゲンPGがコーティングされており、
歯の健康にも配慮されています。

食べ物のかたち

食べ物を食べるための力が衰えると、せっかく食欲があるのに食べる量が減ったり
食べなくなってしまうことがあります。

食べ物を食べるには、食べ物を口に入れる・舐めとる、食べ物を噛む咀嚼(そしゃく)、飲み込む嚥下(えんげ)をすることで体の中に入れることができます。
しかし、老化が進むにつれて舌を動かす力が弱くなったり、歯が悪くなったり顎の力が衰えると
咀嚼がむずかしくなったり、筋力や体力が衰えると嚥下する力が弱くなってきたりします。

なんだか最近食べにくそうだな…、勢いよく食べてたのに途中でやめちゃうな…など
お食事がスムーズにできていない時は食べ物の形を変えてみると改善することがあります。

食べ物の形状は大きく分けると
ドライフード(カリカリのまま)
ふやかしたドライフード
ウェットフード
フードプロセッサーでドロドロにしたもの
くたくたに茹でたもの
液体
ゼリー状
などがあり、工夫すればいろいろな形に変化できます。

食べるときに口からフードを落とす、固形物を舐めとるのが苦手
こんな時は、舌ですくって食べられる液体やペースト(ムース)タイプのものにしてみると
舌にご飯がまとわりつきそのままお口に運ぶことができるので口から落としにくいです。
舌を使う力が衰えてくると、食べ物を押し付けるように鳥が食べているように突いて食べる、飛び散っている、ネチャネチャになる、隅に残るなど特徴的な食べ方がみられます。

⦅注意⦆
もともと液体のものやペーストはドライフードに比べカロリーが少ないので、いっぺんに
必要量を食べられない子は回数を多く与える必要があります。

がっついて食べるのでカリカリだとひっかけるけどウェットフードは顔中汚しちゃう
こんな子には、ドライフードを少し固めにふやかしたり、ふやかしたものを小さなお団子状に
してみるのもいいです。水分があると飲み込みやすくなり、まとまった形にすることで
お口に入りやすくなります。
⦅注意⦆
お団子状にする際は噛まずに飲み込んでものどに詰まらせない大きさにして一気に
食べさせないようにしてください。食道に詰まらせて吐いたり苦しくなります。

お水や液体はひっかけてむせる
そんな時はすこしとろみをつけてあげるとスルンと飲んでくれることがあります。
人の介護の現場でもとろみをつけたりして誤嚥を防いだりします。

自分で食べることが難しくなり流動食をあげるが口からこぼれてしまう
流動食はシリンジであげる場合やお皿からスプーンで口に運ぶなどの方法が多いかと思います。
ドロドロのごはんはあげるのが難しく注意しなければいけないことが多いです。

流動食のあげ方のポイントは、
上半身を起こす
体勢が崩れないようにしっかり支える
顔の位置は上すぎず下すぎず
口の動き、嚥下を確認する

理由は以下で解説していきます。


上半身を起こす
寝たままあげてしまうと誤嚥したり、そのまま反対側に食べ物が流れていくことがあります。
上半身を起こし、体をまっすぐに正面を向くようにします。お座りできない子は伏せの状態から倒れないように支えてあげます。
美味しすぎて目をつむっちゃっているスタッフの愛犬ふゆちゃんです♪

顔は上すぎず下すぎず
顔を上げすぎると誤嚥させたり、下を向かせすぎると食べ物が口に入りにくかったり鼻に入ったりして
介助する側もされる側もたべにくくなります。お顔はまっすぐむくようにを心がけます。

体勢が崩れないようにしっかり支える
食べさせている途中で姿勢が崩れるとその都度立て直さないといけませんし、
せっかく食べているのを中断したりしてスムーズなお食事ができません。
姿勢の維持が難しい場合は足をあいだに入れたりクッションで上半身を支えるとあげやすくなります。
シリンジであげる場合は、動物の後ろから手をまわし犬歯(牙)の横からすこしずつ流し込みます。

この時に、ただ流し込まずに舌の上に少しずつ乗せるような感覚で流すと食べ物があふれにくいです。
その後ににごっくん(嚥下)したかを必ず確認しましょう。
この確認をしないと、ひっかけたりまだ口の中にあるのに入れるとあふれ出てきます。

食べるときの姿勢・環境

ご飯を食べている時はどんな姿勢で食べていますか?
頭が床に近いところまで下がって食べていませんか?

ワンちゃんネコちゃんは人間のように食道がまっすくぐ下に向かっていないので
食べ物が頭のほうに戻りやすい状態にあります。

わかりやすくすると…

こんな感じです(゚∀゚)
これはちょっとおおげさすぎますがイメージはこんな感じです。
なので、下を向いたままご飯をたべていると嚥下する力が落ちている子は吐きだしやすくなったり
飲み込みにくくなります。

また、頭が下がって前に体重がかかると食べにくくなりだんだん疲れてきます。
本当は食べたいのに体が疲れたから食べるのをやめる=あれ食欲ないのかな?に繋がることがあります。

食べやすい姿勢にするには食器の位置を高くしてみるのがおすすめです。
頭が下がりすぎず、上がりすぎずちょうどよい高さの食器に変えられるのがベストですが
なかなか既製品で探すのは難しかったりします。

高さの目安は、お皿の上部がその子の肘と同じくらいを目安にすると丁度いいことが多いです。

もし既製品がなければ、平たいお皿とお茶碗を組み合わせてみたり、100均で売っているような小さな木の台でも代用できます。大型犬は陶器でできた鉢植えを代替わりにすると食べるときにお皿が移動せずひっくり返しにくいようです。
プランタースタンド利用する方もおられますが、動物の頭や足が入り込んで事故につながることがありますのであまりおすすめはできません。

高さをそろえた後は、足元が滑らないように滑り止め付きのマットを敷いて滑り対策をしておくとばっちりです。
滑り止めマットにもいろいろ種類がありますのでその子が使いやすいものを選んであげるとなおいいです。
当院では、入院中の子に足の悪い子やすべって体を支えにくい子には、ダイナグリップを使っています。

写真は使い古して色が剥げてしまっている部分があります…。防水のためこぼれてもすぐにふき取ることができ、シートタイプははさみでカットして自由なサイズにできます。
滑り止め効果もばっちりなのでツルツル滑る床にはもってこいです。

食欲がない時は?

シニアになると食事の好みがコロコロかわってくることがあります。
本当に食欲がないのか見極めるのがとても難しいですが、ただ今日はこのご飯は食べたくない!の時はいつものお食事に少し変化を付けてあげると食べてくれることがあります。
一番試しやすい方法としてはトッピングです。
ウェットフード
調理した消化に良いお野菜やお肉
ペット用牛乳
茹でたお肉やお魚の汁
ふりかけ
ちゅーる
…などなど今はペット用の食べ物がたくさんでていますのでお家にいくつかストックしておくのもおススメです。

ただし、いろんなものをコロコロ変えて与えすぎるとお腹を壊してしまう子もいますので注意しながらあげてみてください。

今回のシニアケア『お食事 編』いかがでしたでしょうか?
まだまだご紹介しきれていないお話がありますが今回はこのあたりで一区切りです。ご好評でしたら第2弾『お食事 編』がでるかもでないかも…?です。

次回は、この時が来る前に!早めに備えよう『排泄ケア 編』をご紹介します!