ついに、ついに、
当院の手術室にも念願の温風式加温装置が導入されました!
温風式加温装置とは、
あたたかい空気が優しく動物の体を包み込むようにあたためてくれる機械です。
手術中に使用します。
イメージとしては布団乾燥機みたいなものですが、
医療用なので低温やけどが起こりにくいように設計されています。
全身麻酔と低体温
一般的に、麻酔をかけると体温が下がります。
これは麻酔薬の影響で血管が広がると、体の中心にためていた熱が一気に出ていってしまうこと、
全身の代謝が落ちること、脳の体温調節の中枢がうまく機能しなくなることが原因です。
体の大きな大型犬はもちろん、
チワワやトイプードルのような体の小さな小型犬や猫にとって、
全身麻酔時の低体温は以前から課題でした。
というのも、短時間で終了する去勢手術ではそれほど体温は下がりませんが、
避妊手術をはじめとしたお腹を開ける手術では手術開始と同時に体温がグングン下がり始めます。
特に脾臓や肝臓などの内臓器の手術は体温との戦いになりやすい傾向にあります。
胃や腸などの消化管の手術はもっとも体温が下がりやすい手術のひとつです。
手術中に体温が冷えることで動物の体には様々な悪影響が出ます。
血液の凝固機能が落ちることで出血しやすくなったり、
麻酔薬の代謝が遅くなることで麻酔から覚めにくくなったりします。
体温が下がると免疫機能の低下のために感染が起こりやすくなり、
人では入院期間が長くなってしまうこともあるようです。
この機械があれば元気な去勢手術や避妊手術はもちろんですが、
ギリギリの状態で行うハイリスクな手術でも、
より動物への負担が少なく、安全に早く退院することが期待できます。
実際に使用してみました
先日、さっそく避妊手術があったので使用してみました。
1時間程度の手術でしたが、全然体温が下がらないのでびっくりしました。
麻酔スタート時とまったく同じ体温のまま手術を終えて覚醒することができたのです。
これまでも手術中は電気式の加温マットは使っていたのですが、その違いは歴然でした。
実際、人間の麻酔でも様々な加温方法は存在するものの、
温風式が最も効果的であることが証明されていて、広く使用されているそうです。
体が小さく、より体温が下がりやすい小型動物ではその影響が顕著に出たのも当然かもしれません。
今後も当院ではより安全な麻酔を極め、
ご家族とペットに安心して手術を受けて頂けるように努めていこうと思います。